烙印の紋章〈3〉竜の翼に天は翳ろう

「自分の気持ちは、自分でわかるつもり。でも、その『自分』が、内側に何人もいるみたいで気持ちが悪いんだ。ひとりひとり言うことが違うから、どれが本当の『自分』かわからない」

「それが、大人になるということではないでしょうか。おそれながら、生のままの『自分』でいられる幼年期を終えた、ということです」

 

烙印の紋章〈3〉竜の翼に天は翳ろう (電撃文庫)

烙印の紋章〈3〉竜の翼に天は翳ろう (電撃文庫)

 

 

「おまえも、わしの孫であり、アインの娘であり、そしてガーベラ王女である。誰かの親友であるかもしれぬし、誰かの敵であるかもしれぬ。やがては誰かの恋人となって、誰かの妻、いずれは誰かの母ともなるのだ。その都度増えていく自分の顔から、目を背けてはならんぞ。考えるのもいい、迷うのもいい、ただ、逃げてはならん」

(中略)

「もしも自分でどの顔が本当かわからず、悩んで、悩んで、苦しいとき。そういうときはな、ビリーナ。鏡に向かって、こうすればいい」

 言うなり、ビリーナに向かってあかんべえをした。

「こうするとな、自然と仮面が剥がれて、本当の自分がその向こうに見える気がするものさ」