丘ルトロジック4 風景男のデカダンス

「なるほどな。しかし咲丘クン、それは少し語弊がある。世紀末という言葉が『世の終わり』という文法で用いられることは、恐らく日本くらいでしかないだろう。世紀の終わりという元の意味用法以外では、アレは思想風潮、強いて言うなら美術の言葉だ」

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「逆を言おう。独裁者に限らず、何らかの権力を行使する際には、それは必ず理不尽になる。そしてその中で最も理不尽な者が、最大の権力者なのだよ」

(中略)

「ガキの教育とはまさにこれじゃ。己の知識も知恵も回らぬものだから、保護者というものが如何に理不尽であっても、その理不尽を許容するしかなくなる。小さな子供には反論も反撃も出来ぬからのぉ。それを延々と繰り返して、人は権力を学ぶんじゃよ」

(中略)

「そして自分が無力だと気付いたところで、その原因を『強大なものが外から自分を抑圧していて、自分には目標が達成できない』と権力者に押し付け、屈服する術を身体に刻み込むわけじゃ。そんな有難い防衛本能を刻ませてくれることで、理不尽に抵抗できない身体が、社会が完成をしてゆく。むしろのぉ、こうでもせんと国は成り立たんのだ。権力者は誰でも理不尽なのだからのぉ。歴史はこうして繰り返し、社会は頑強な構造を保つ。とても基本的なことじゃ。最近の若者は知らんかえ?」

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「--ふざけるな、それは神秘じゃねえ、芸術なんてただの催眠術だろうが」

 

 俺の言葉に、沈丁花は絶望の眼差しを向ける。

「太古の昔からそうだった。人間は自然の創り出した音楽の、風景の神秘に感動し、それらを褒め称える為に芸術を生み出したんだ。芸術はただの神の仕事の模倣に過ぎないんだよ。人間の創り出した芸術なんてものは、それ以上でも以下でもない。自分を世に名高い芸術家と気取る奴がいたとしよう。そいつは単に、民衆を操る催眠術がとても巧かっただけだ。人間の感動する要素を神の創り出した神秘から模倣する技に長けているだけで、それらが多くの人間に更なる巨大な勘違いを生みつけているだけに過ぎない。(中略)」

「好きです!出会った時から一目惚れでした!俺と付き合ってください!」

 その言葉を聞いて、沈丁花は全身に鳥肌を浮かべ、叫ぶ。

「あ、あぁ、ああああ、ああああああぁぁぁぁぁああああ!!」

 涙を目尻に溜めて俺を睨み、病気の身体のどこにあるのか分からない力で俺を引き剥がし、沈丁花は俺の頬を全力で叩いた。

 

「--断る!!」


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