ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~

「いいえ、違うわね・・・・・・言い争っているというよりは、母の方が一方的に言い募っているみたいだった。いつも父は黙っていて・・・・・・もし母と意見が違っていても、強く言えないのかもしれない、と思ったことはあったの」

 言葉を切り、静かに顔を上げる。

「でも、わたしは言って欲しかった。別居していた夫に連れ戻された時も、父は黙っているだけ・・・・・・母だって、孤独だったと思うわ。一緒にいる相手が自分の気持ちをぶつけてくれなかったら、それは一人でいるのと同じだもの・・・・・・」

「あたし、お母さんに会いたいと思ってるよ。でも、もう必要とはしてない。お姉ちゃんは立派に店をやってるし、あたしも家事をやってる・・・・・・お母さんがいなくたって、二人で生きていけるんだよ」

 その表情や声に、非難の色はまったくない。他の者は言葉もなく、ただ耳を傾けていた。

「なにかしたいことがあって、お母さんがよそにいるのは分かってる。でもさ、今までみたいに連絡もしてこなくて、顔も出さないつもりだったら、あたし、そのうち会いたいとも思わなくなるよ?・・・・・・そうなったら、もうこの家には入れない」

篠川智恵子は初めてサングラスを外し、改めて制服姿の娘と正面から顔を合わせた。目に焼き付けようとするように相手を凝視していたが、

「本当に、大きくなったわね・・・・・・文香は」

 やがて、しみじみ言った。

ビブリア古書堂の事件手帖 (1) (カドカワコミックス・エース)

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ビブリア古書堂の事件手帖(1) (アフタヌーンKC)

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