憐 Ren 錆びゆくココロと月色のナミダ

 そうだ。考えるまでもなかったんだ。

 出来ることが一つでもあるというのなら、それをするだけだ。

 たとえどんなに分が悪いとしても、そんなこと関係なかった。

 やれることがあるのにやらずに後悔することは、忸怩たる思いで運命に従うことよりも屈辱的だ。

 私が、私であるためにも、運命に、抗ってやる。

 --ただし、玲人を巻き込むことだけは出来ない。私一人の力で抗ってやる。

憐 Ren 錆びゆくココロと月色のナミダ (角川スニーカー文庫)

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 未来の人間は、目に見えないものを一切信じなくなっていた。

 そこに現れたのが、人を『有用』と『不要』に選別する『時の意思』だ。

 『時の意思』は機械である以上、確固たる物質として存在している。そして時を演算するというある種神めいた力を有している。時の流れは、行き着いた科学を以てしても確実に把握出来ないものだ。つまり、五百年後の世界に残された唯一未知なるものなのだ。

 『時の意思』はその未知なる時を読み、人を選んだ。ゆえに現人神ならぬ現物神となった。

 

憐 Ren [DVD]

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 玲人は月の光の色が好きではない。白なのか、黄色なのか、はたまた違う色なのか、よく分からない色だからだ。ふざけた色、と思っている。だけど、憐の髪に弾かれた月の光はなんてきれいだろう。芯があって、それでいてとても儚げできれいな金色の光。太陽の光を弾いたよりも柔らかな光。憐と月だから生まれる光。