ピニェルの振り子―銀河博物誌〈1〉

「人の好みはさまざまだよ。たいていの人は、自然界の困難に立ち向かう人間の姿や精神を気高いものと考える。だがモニカは違う。環境が変われば、それに逆らうこともできずに滅んでゆく生き物に心を奪われてるんだ。なぜだかわかるかい」

「わかんないよ」

「哀れみとか、そういうのじゃないんだ。環境の変化に対応できない生き物は、言い換えればその環境に最高にうまく調和していることになる。ピニェルの森も美しかったね。古い樹が倒れると、地上まで光が射す。新たな植物が争って芽生え、高さを競う。そして最後にもとどおりの林冠を作る。競争に負けた植物は枯れて林床は清浄になる。森はそうやって均衡している。自然の美とは均衡の美なんだ。モニカはその美に魅了され、もっとよく知りたいと思っている」

TINAMI - 第一話 野尻抱介『ピニェルの振り子 銀河博物誌1』(ソノラマ文庫)

ビブリア古書堂の事件手帖」の二次創作で、野尻抱介『ピニェルの振り子 銀河博物誌1』をマンガで語る。