蒼穹のカルマ5

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「私は鷹崎駆真。元騎士でありーー」

そして沈音を示すように、手を掲げる。

「勇者であり」

次いで、アステナに、

「魔王であり」

魔王ルーン・ロヴァルツに、

「魔人の主であり」

ウタに、

「神たる女!」

地宮院・天由良と地宮院・霊由良に、手を向ける。

「私の全ての力!権能!人脈を以て!在紗を必ず救ってみせる・・・・・・ッ!」

「・・・・・・っ」

冬香が足を一歩後ろに下げ、息を詰まらせた。

「だから望め・・・・・・!それだけでいい!在紗の幸福を渇望しろ!親とはーー母とは・・・・・・ッ!」

駆真はそれを追うように、冬香に向かって足を踏み出す。

「そういうものでしょう・・・・・・義姉さん・・・・・・ッ!」

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駆真は目を丸くした。

在紗が泣くところなんて、宗吾が死んでから五年間、一度も目にしていなかったのである。

嗚呼、だからきっと、これは今このときだけの涙ではなかった。

自分が泣いたら駆真が悲しくなるから、なんて。

七つのときに言ってからずっと、この小さな少女は、自分の中に色んなものをため込んできたのだ。

「・・・・・・在紗っ」

そんな事態を招いたのは、他でもない、駆真自身が原因であろう。

駆真が弱かったから。頼りなかったから。在紗は涙を見せることができなかったのだ。

親に涙を見せない子供なんて、いない。

二人での暮らしが始まって、五年。

ようやく在紗に認められた気がしてーー駆真は在紗を抱く手に力を込めた。

蒼穹のカルマ5 (富士見ファンタジア文庫)

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